半沢直樹と桃太郎の意外な共通点


土下座が流行るのもどうかと・・・

半沢直樹の名言『倍返しだ!』が2013年の流行語大賞になったのは記憶に新しい。

しかし、年が明けて2014年のお正月バラエティで、芸人が「倍返しだ!」と言ったら、他の共演者が「もう古い」と突っ込みを入れていた。

たった数日で時代遅れになろうとは・・・

そんなに急いでどこへ行く?

ちなみに、半沢直樹のヒットは、TV局サイドも予想していなかったことだそうだ。
トレンドを読むプロのTV局でさえ、流行を読むのが難しくなっているらしい。

そうかと思うと、1月から必殺シリーズをイメージしたドラマが始まった。(天誅~闇の仕置人~)
最近はどうやら勧善懲悪が受ける世の中らしい。

小さい頃から時代劇を見て育った自分にとっては、懐かしさを覚える。
そして今の若者にとっては、悪者がやっつけられる姿を見ると、気分がスッとするのだろう。

確かに、ここ十数年、
問答無用で悪い奴を切り捨てるようなドラマは放送されてこなかった。
教育上よくないとかいう、各方面からのクレームが怖かったと思われる。

競争がよろしくないと、運動会の短距離走でも手をつないで一緒にゴールしていた時代だったし。

そんな中で成長した彼らが、突然、生き馬の目を抜く現実社会に放り込まれるのだから・・・
理不尽さへの耐性がなくても、やむを得ないかもしれない。

だから、理不尽を罰してくれる存在に歓声を浴びせる気持ちは、何となく分かるというものだ。

されど、世の中のものを何でもかんでも単純に善と悪に2分するのは、考えものだ。

確かに、「あっちは正しくて、こっちは間違っている」と切り分けてしまうのは簡単。
分けてしまえば、もう悩む必要がないし、分ける材料もネットを見ればいくらでも転がっている。

もちろん、仮想敵を作ってシミュレーションするのはいい。
有効な危機管理術だから。

でも現実の問題に目を背けて、わかりやすい敵を糾弾するだけなのは建設的ではないだろう。

相手を批判することに終始するのは、不毛の極み。
反対の声を上げるだけで、自分の考えを提示しないのは、何も考えていないと告白しているに等しいからだ。

批判するならば、自らの意見を持って反論し、より良い意見にするための議論にしなければ意味がない

ネット社会になって、誰もが意見を表明しやすくなった。
それが大きな流れになって、一大ムーブメントを巻き起こすこともある。

一滴一滴の雨が大雨になって、川を氾濫させ、山をも削るように。
そう、自分の声が社会を動かす力になる。

人々が熱心にネットに向かうのも無理はない。

だが、だからといって、簡単に大きな流れに飛び込んでいいものだろうか?

追い風を受けているときは、そのことに気づかないように、多くの人は流れに乗っている時、思考が停止してしまう
それが怖い。

流れに身を任せると、自分で泳がなくとも勝手に運ばれていく。
行きつくところまで行ってしまう。

何も考えなくても連れて行ってくれるので、楽であることに間違いはない。

ただ、問題は、向かっている先が谷底だったとしても、思考が停止しているとそれに気がつかないことだ。

さらに、ある流れの中にいると、他の流れが見えにくい。

社会の流れには、勢いのあるものから細いものまでいろいろある。
それを見極めてうまく乗っていかないと、いつの間にか転落していることもある。

投資などは、その最たる例だろう。

ここで半沢直樹の話に戻るが、
今の世の中、「あっちは悪い」「こっちが正しい」と、すぐ大きな流れに乗って思考を停止させてしまう風潮になっている気がする。

そういう身の振り方は確かに楽だ。
自分で物事を考えなくても、主流の考えに乗っていればいいのだから。
悩む必要がない。

昔話の「桃太郎」。
時代を超えて語り継がれているお話だが、
よく考えてみると、桃太郎はなぜ鬼退治に出かけたのだろうか?

鬼が悪いことをしていると聞いたから

そう通り。
確かにその通りなのだが、桃太郎は鬼が具体的に何をしたのかまでは聞いていない。

鬼が悪いことをしたとして、
なぜ悪いことを行うことになったのかの原因を考えていないし、悪いことをしていない鬼はいないのかも考えてはいない。

【鬼=悪】【人間=善】の二元論から抜け出ていないのだ。

もし、桃太郎が鬼退治に出発する前に、

「どんな悪いことをしたのだろうか?」
「なぜ、そんなことをするのだろう?」
「悪いことをしていない鬼は退治しなくてもいいのでは?」

などと考えていたら・・・

そんな面倒くさい話は、現代まで語り継がれなかったかもしれない。

半沢直樹と桃太郎。
時代を超えて大衆に受ける話は、難しく考える必要のない単純明快な話。

この共通性に、現代日本の大衆の怖さを感じる・・・

コメントは受け付けていません。

このページの先頭へ